【ネタバレあり】映画『国宝』見た感想

映画

最近話題の映画、国宝を見てきた。今のところ今年ヒットしたナンバーワン邦画となっている。こういう映画は興味のあるなしに関わらず、とりあえず映画館で見といた方がいいと誰かに言われたような気がして急いで見てきた。

で、最初に結論を言うと個人的にはあんまりノレなかった。正直、過大評価じゃね?とすら思っている。
というわけで今回はこの映画をネタバレありの上で、良かったところ、気になったところに分けて、感想をつらつら述べていこうと思う。

事前に言っておくと後半は否定的というか、批判的な文章になっているのでお嫌いな方はそっと閉じてほしい。

 



あらすじ

この物語は一貫して「血」の話である。
ヤクザ一家に生まれながら、歌舞伎の才能に恵まれた喜久雄(吉沢亮)と歌舞伎一族出身の俊介(横浜流星)の2人が主人公であり、俊介の父である半二郎(渡辺謙)は実の子供を選ぶか、外の子供を選ぶか。
父親の選択の物語という点では『そして父になる』的なテーマだが、それ以上に血筋、家族、伝統が重んじられた展開になっている。

全体的にはジャンプ漫画の総集編みたいな内容で、2人の男の成長物語、ヒロインの登場、別れと再開、つまりは友情、努力、勝利が描かれている。

良かったところ

吉沢亮、横浜流星の演技力はさすがで、大きなスクリーンに歌舞伎の化粧を施した2人のドアップが醸し出す絵力はすごい迫力がある。

さらにそこで使われている劇中の音楽は、映像と相まって、儚さ、美しさ、虚しさをまとめて感じることができるような凄みがある。最後にエンディングを歌う井口理(King Gnu)の声も含めて、全体の映像を引き締めてくれる。

また、全体的にテンポが早く、展開がどんどん進む。絵の美しさと相まって3時間がまったく長く感じないところもこの映画のすごいところである。

そしてラストは俊介が血筋(遺伝的糖尿病)に抗えずに死んでしまうが、その終わり方も、「血」というテーマの描かれ方として一貫性があってよかった。

 



気になったところ

さて、ここからは気になたところを述べていくので、そういう意見を目にしたくない人は、飛ばしてほしい。正直言ってツッコミどころはかなりたくさんあったと感じた。
というわけで以下、そのことについて詳細に説明していこうと思う。

まず、この映画に終始言えることだが、展開が早すぎる。
◯年後、◯年後のオンパレードである。主人公は2人だが、周辺の登場人物は多く、もう少しそれぞれの人物像を深掘りしないと誰にどう感情移入して誰目線で視ればいいのかよくわからなかった。

次にこの映画は、一族の血筋か、外の天才か、半二郎の選択こそが最大のポイントであり見どころだと思うのだが、そこのバトルがあまりに呆気なく終わる。
世襲の世界なので当然といえば当然かもしれないが、半二郎の「鶴の一声」で決まり、俊介が逃げ出し、2人の物語は一旦終わる。
それがあまりに突然で見応えなくおわり、驚くと同時にがっかりしてしまった。

そして、その後の展開も謎だった。

特に濡れ場だけで、突然の登場とフェードアウトした彰子(森七菜)はなんだったのだろう。
「血」がほしい、というテーマは確かに前述の通り一貫しているが、それにしてもあまりに行き当たりばったりで、もう少しなんとかならなかったのかと思ってしまった。

あと俊介が10年表舞台から消えていたのにちゃっかり復帰したもの気になった。
喜久雄も同様に、ヤクザ家系バレて一時姿を消すが、国宝のじいさん(万菊)が死に際に、これまた「鶴の一声」で復帰し2人で復活するという展開だ。
2人ともいろいろあったけどまた舞台に戻ってこれたね、という美談である。
いや、そんな簡単に復帰できる世界なのか?という疑問を置き去りにしたまま、過去のこととして話はどんどん進んでいく。

極めつけは、ラストのカメラマンが娘というオチである。
娘がカメラマンなんてそんな描写はどこにあったのだろうか。というか喜久雄の家族はどこで何をしていた人たちなのだろうか。基本的に喜久雄目線で話が進むので、ある意味家族をおざなりにしていたという心情を反映しているとも言えるかもしれない。しかし、いち観客からすると、物語を終わらせるための装置のように、あまりに唐突に感じ、ラストの歌舞伎を演じる姿こそ美しかったものの、物語の締め方として納得のいくものではなかった。

あと気になったのは、舞台でみんな倒れすぎじゃないか?とか、子供とは言えヤクザに敵討ちしてそんな簡単に逃げて来られる?とか、細かいことを言い出すとキリが無くなるのでここらへんでやめておこう。

 



まとめ

さて、総じて物語の展開としては気になるところが多く、前評判ほど楽しめなかったのは事実である。

ただ、3時間があっという間という各所の評価にはうなずける。
ストーリー自体は退屈なところもあるが、映像や音楽の美しさによってあっという間に時間が経つという、おそらく今まで体験したことがない映画だった。
だから見るのを悩んでいる人がいるのならば、ぜひ今のうちに絶対に映画館で見ることをおすすめする。

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